2020/4/15

【事例インタビュー】焼失した首里城をVRで復元。修学旅行生向けVRガイドまでの軌跡 〜興南アクト部〜

中学校と高等学校を擁する興南学園は、1962年に設立された沖縄県県内でも最も歴史のある私立学校です。同校の部活動である「興南アクト部」ではこれまで、修学旅行生向けの首里城ガイドを現地で行ってきました。しかし2019年10月31日に首里城が火災により焼失。今後のガイドを模索する中、デジタルと現実を組み合わせた新しい首里城ガイドができないか、とVRガイドに向けての新たな一歩を踏み出します。VRガイドに至るまでの道のりと、ハコスコのシリコン製ゴーグル(ハコスココンパクト)を選んだ理由を興南アクト部顧問の門林先生にお伺いしました。

 

 

「知識を伝えるだけではなく……」生徒が感じたパワポでのガイドの限界

――興南アクト部の概要(沿革やメンバー構成、活動内容)について教えて下さい

興南アクト部は2010年、「中高生が実際の世の中と出合う場所を作りたい」という思いで、数名の生徒たちと立ち上げた部活動です。地域社会(沖縄)に根ざし、交流と貢献を通じて、自らを高めることを活動の目的としています。これまで「有名人のインタビュー企画」、「ラジオ放送や本の出版」・「ビジネスプランコンテストへの参加」・「高校生マイプロジェクトへの参加」など、様々な活動を行ってきました。現在はおもに県外・海外からの修学旅行生や観光客を対象とした交流活動・ガイド活動を実施しています。

 

 

――首里城消失後、なぜVR使ったガイドをやろうと思ったのでしょうか?

2019年10月31日の首里城火災で、私たちは大切な場所を突然失うこととなりました。しかし、焼失後もすぐにガイドの予約が入っており、生徒たちと話し合った結果、これからも自分たちで首里城を伝えていきたいという結論に至りました。

何とか現地でガイドを再開したいと思っていた時、東京大学の川上先生たちが立ち上げた『みんなの首里城デジタル復元プロジェクト』に出会いました。今までのアナログなガイドを大切にしつつ、デジタルな要素をかけ合わせた、新しい自分たちの首里城ガイドを作ろうとVRガイドにむけての一歩を踏み出しました。

 

―― VR以外を活用するアイデアはありましたか?

焼失当初は学校に修学旅行生をお招きし、パワーポイントを使った疑似ガイドを実施していました。しかし、やがて生徒たちは壁にあたりました。「首里城のもつ空気感が伝わらない」、「みんなの前で一方的に話すのではなく、一人ひとりの横に並んでガイドがしたい」…。知識を伝えるだけではなく、首里城で楽しい時間や思い出を共有することこそが自分たちにできるガイドなのだと改めて気付くきっかけになりました。

そんな中、2019年12月に『みんなの首里城デジタル復元プロジェクト』の川上先生が沖縄に来てくれました。その時、実際に現地でスマートフォンを用いたVRガイドができるか、一緒に首里城を回りました。その時、川上先生が段ボール式の簡易ゴーグルを提案してくれました。

 

―― なぜ最終的に「シリコン製ゴーグル」を選んだのでしょうか?

沖縄は雨が多いため、段ボールだと難しいと感じました。そこで雨でも使えるゴーグルを探していた時に出会ったのがハコスコのシリコン製のゴーグルでした。「これだっ!」という直感で個別で売ってほしいとメールを送らせていただきました。その結果、少数かつ教育・ボランティア活動に使用するということもあり、今回は寄贈という形でハコスコのゴーグルを使わせていただけることになりました。ありがとうございます。

 

 

「首里城ガイド」で現実世界をより豊かにするVRの可能性を実感

―― 首里城VRガイドを体験した修学旅行生の反応や反響を教えて下さい

VRは現地に足を運ばなくても見ることはできますが、実際に正殿があった場所・崩れ落ちたがれきの前でVRを使用するようにしています。

「首里城の正殿が復元した時、本物はどれだけの大きさなのか、実際はどんな色なのか、もう一度必ず見に来ます」と修学旅行生たちに言っていただけたことが、一番うれしかったです。失った現実も含めて、今のありのままの首里城も、美しいデジタルな首里城も、あわせて見てもらいたいと考えています。

 

―― 首里城VRガイドとこれまでの首里城ガイドとの違いはありますか?

先日行った首里城ガイドで、VRは修学旅行生にとっても、とても興味・関心をもっていただけるツールだと実感しました。しかし、デジタルだけに頼るのではなく、今までの何気ない同世代だからできる会話や首里城を失ったときのそれぞれの想いを語るなど、今までしてきたアナログなガイドも大切にしてほしいと生徒たちには伝えています。

一度は現地での首里城ガイドをあきらめかけた生徒たちにとってVRガイドは新たな希望となりました。今回の首里城ガイドを通じて、VRを現実世界とつなげることで、大きな可能性が広がることを実感しました。表現が難しいですが、現実をよくするためにVRを活用するということなのだと思います。

生徒たちはまだその目新しさに興味津々の段階ですが、今後どう活用していけば「現実世界をより豊かにするために、どのようにVRを活用すればいいか」という課題と向き合っていってほしいと願っています。

 

 

県外の修学旅行生だけでなく地元沖縄の人たちにもVRガイドをしたい

―― 修学旅行生以外に向けてのガイドを行う予定などはありますか?

有名な観光地である首里城であっても、地元の人が頻繁に行くところではありません。今後はもっと地元の人、特に地元の小学生などにも首里城VRガイドをしたいと話を進めていました。

3月に予定していた地元の小学生向けガイドはコロナウィルスの影響で残念ながら中止となりましたが、今年はぜひ実現したいです!

 

―― 興南アクト部の今後の活動予定について教えて下さい

2020年4月からもたくさんの修学旅行生たちが興南アクトとの交流を希望してくれています。わたしたちは可能な限り、断らず受け入れようと考えています。

4月もたくさん予約が入っていましたが、コロナウィルスの影響でほとんどが中止・延期になりました。本格的な受け入れが始まるのは5月以降になりそうです。今年は、修学旅行生向けガイドに加え、地元の方々にもガイドしたいと思っています。

 

――ありがとうございました。

ハコスコVRソリューション